高橋健三 「たそがれの記」(124)
2024.5.1〜6.2

「たそがれの記」最後のご挨拶

　長いこと、支えて頂いた二村兄や友人の皆様に感謝します。僕には、適当な言葉が見つかりません。ご迷惑ばかりおかけして来たのだと思っています。でも僕の過去の存在感のすべてだったと思います。心から感謝申し上げます。読んでくださった皆さんにも、御礼申し上げます。ここへ来て、体調が整わなくなり、周りの持ち物の管理もできない有様です。きっと皆さまには、大変なご迷惑をかけていると思います。今日で、僕の「たそがれ」の記述を終了させていただきます。長いことおつき合い頂き、感謝の言葉もありません。有り難うございました。いろいろご迷惑をおかけしたことは、心からお詫び申し上げます。有り難うございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高橋健三

｢たそがれの記｣終刊へ向けて（その３）

　投稿の終りが近づいています。後２日で５月も終わり、梅雨も本格的になってきます。グリーンヒルでは、あちこちのアジサイが咲き始め、湿っぽいけれど、艶っぽくもある味わいの季節になります。今また書き始めたのですが、大きな「遺言っぽい書置き」をしようというのに、碌な文章の切れ端も浮かびません。何も文章にならないうちに、もう後２日で、５月も終わり、更に２日経てば、「たそがれ」終わりの日がやってきます。すべてなんてことのない時間の経過でした。後は祈りのような気持ちが残りました。
　すべてその時間のうちに、Ｎ兄の著作『日本労働史研究』に次いで、『鉱業労働史』が寄贈されてきました。彼の仕事の力作と言って良い作品です。少し経てば、「世界の労働史」の一角に据えられる力作になるでしょう。僕にはこんな労作は１冊もありません。しかしとてもうれしい出来事です。一人でお祝いをしています。

｢たそがれの記｣終刊へ向けて（その２）

　まだ歴史研究で、忙しいのでしょうね。僕の方は、心おきなく締めをしたくて、考え事ばかりしていますが、そちらは、まだあちこちお出かけなのでしょうか。僕の方は、独り言を続けます。
　そちらの母君は、確か百歳ぎりぎりで、亡くなられたとか聞いたような覚えがありますが、間違っているでしょうか？　僕にはそんな際どい生き方は所詮できないと思っていますが、和子の懸命な生き方を見ていて、まるで人ごとのように、声援を送っています。僕よりも長生きになるのは当然で、僕は追い越されると思っています。多喜子の家でも、同じ様な「生きっこ」のモードが感じられます。競争の意識ではなく、「現象に目を見張る」意地とでも言うか、僕には競争する意地はありません。持って生まれた能力と意地に目を見張るとでもいうか、自分の肉体との会話とでもいうんでしょうか、そのゴールがもうじき終わる時期に差し掛かっているのです。

｢たそがれの記｣終刊へ向けて（その１）

　Ｎ兄への語りかけをしながら、僕の91歳の誕生日である６月４日へ向けて、「終刊の言葉｣を用意し、｢たそがれの記｣を閉じたいと思います。その日まで、Ｎ兄にもお付き合い願いたいと思います。僕の残っているエネルギー次第で、連日になるか、飛び飛びになるか、わかりませんが。10日余りの時間だと思います。宜しければ、僕との会話を自然につなげてください。今日がその１となります。
　僕の発想のスタートは、社会主義国が、平和と建設に一番近い国柄だと思っていました。ところが、今や、一番危険な国になっていることに、絶望を感じています。革命が、手段ではなく、目的になってしまっているのです。台湾をどう扱ってゆくか、つまり資本主義の生き残りの仲間たちをどうあつかうのか、それによっては、どうにもやりきれない思想に転落してしまう。自分たちの側に、誤りを全く認めないと決めてかかる発想を絶対化するところに大きな落とし穴を感じます。宗教とか、ヒットラーのような、過ちを認めない絶対者を中心とする政治集団を僕は安易に認めません。日本帝国主義の残した血の匂いが、僕らを育てたのだという傷をわすれることはできません。民主的な多角度思想の中で、より前進姿勢の取れる政治が必要なのだと思います。それを追求するには、時間もかかります。権力の使い方にも要注意な部分があります。これまでの歴史を追って、再検証するのもこれからの大仕事です。大きな仕事がまだまだ残されているとは思いませんか。以上

　このところメールが、思うように動きません。もう少し粘ってみますが、どうやら終わりが近づいているようです。ご挨拶は、後にして、今後の世界の戦争状況、原子力戦化が懸念されますが、何の役にも立てなかったのは残念でした。非力を悔やんでいます。このメールも着きますかどうか。

快晴　無風　過剰な高温にもならず、薄着で快適　絶好の洗濯日和・買い物日和の週末になりそうだ

　今日のニュースで、ロシアがウクライナのハルキウに新たな攻撃をかけ、損害を与えたという。どっちが仕掛けたかは、定かでないが、死者も出ているようだ。ウクライナの支援に、国際的な乱れが出始めているという。ロシアでも、侵攻の矛先を立て直してきているらしい。侵略を進めるロシアの方針に変わりはないようだ。調停は一向にはかどっていなかったようだ。平和は進むどころか、困難はウクライナの足をさらに引っ張りそうだ。国連の調停は、無力なのだろうか。
　和子は、今日も歌の練習がしたいらしく「ポピー」に、通って、早めに帰宅して来る。元気が出るのならそれも良いが、もし無理が出たりしないだろうか。僕の心配は絶えない。

朝から初夏の晴天が続く

　やっと落ち着いた陽気が戻ってきた。もう一度ぐずぐずした陽気には戻したくない。後は、典型的なアジサイムードの梅雨を短めに終わらせて、暑いけれど、「短めの盛夏」を、皮膚に刻印して、次のセンチメンタルな秋を迎えたい。僕にとっても、この秋は、90代の重要な時期になってくると思う。
　１年だけこの世代に踏み込み、高橋家にとってまだ未踏の93歳の域に踏み入ることが出来るかどうかの実験になる。僕の体も可成りよれよれになって来ているから、関心はあっても「これまでよ」になるかもしれない。３つ下の妹と、５つ下の女房がまだ頑張っているから、気がかりな戦友を置いて逝くことにもなる。彼女達にも心残りがいろいろあるに違いない。もう２、３年の間にでっかな変化が現れるのだ。それを確かめて行く手立てはない。「多喜ちゃん、和子ちゃん、頑張れよ！」と、応援だけは残しておきたい。

今日も、晴れ損ないの明るい曇りに留まりそうだ

　完璧に晴れるとは、こんなにも難しいものだったか。最近の予報を見ていて、あちら立てればこちらが立たずで、晴天崩れの連続だ。このまま、アジサイに席を譲り渡してしまうことになるのか。どちらにしろ「らしさ」は面目が立つ。
　何のことはない、最近のお天気は、僕の「たそがれ」みたいなもので、あちら立てればこちらが立たずで、記録が時々姿を消す。Ｎ兄の無言の叱咤激励に辛うじて支えられて続いている。
　世界の平和危機や、戦争を避けようとする賢明な策について言及することも、なかなか難しい。皆さんの英知に支えられてこそ、僕にも勇気が出てくる。愛する友人たちを失う前に、人類の存続を願って、世界の友人たちに呼びかけよう。平和はすべての建設の絶対条件なのだ。それを保証するために、スクラムを組もう。

晴れ　白い筋を引いて雲が絡むが、晴れている

　和子の水仕事で、あまり技術を要さない部分が僕に回ってきている。これが、今までより僕を疲れさせている。二人だけの所帯だから、彼女が避けようとする労働は、みな僕にかかってくる。時にはフラツキが出るほど、めまいを感じることもある。そんな場合には、なるべく仕事から逃げる様にして、体の平衡を保つ。いつの間にか、血圧票が、点けられなくなっていた。つけても仕方がないことになっているのだ。ふら付いたら動きを止めて、息をつく。大丈夫そうなら、ゆっくりと動きを繋げる。倒れるようになっては終わりなので、状況を敏感に読み取って、絶対に、限度を越さないようにする。買い出しなどは、殆ど僕が背負うが、荷担ぎのせいで、支障が起きたことはない。買い込んだ品々を分類して、冷蔵庫に納めて、やっとほっとする。和子に先に倒れられては、助けを探さなければならない。僕が病後世話になった分を返すつもりで、自分の体を動かしている。無茶をせず、安全運転が必要になる。ボッカ中の僕に、今まで故障が起きたことはない。食料の準備にこんなに気を使っているのは、初めてのことだ。

豪雨襲来というが、想像もできないほど静かな曇り空だ

　昨日は、「たそがれ」問題で悩んだが、今朝見たら、昨日の分が、きちんと収まっていた。欲が出て、今日の分を書く気になった。今日は、天気が荒れるかもという予報だが、空には、そんな気配もない。空を眺めていた和子がまた出かけたくなった模様。この頃は余り煩く言わないことにしている。「辛さ」は、自分が一番判っている筈だ。僕には、もう彼女を庇い切る自信がなくなっている。彼女も、体の状態が不安な時は、自分から進んで自重する気になっているようだ。それを信用するほかに手はないのだ。

【第２信】
どんよりとした曇りだったが、午後３時現在定着した降りになって来た

　風も、出始めた。この分では、やばい豪雨も可能性が出てきたようだ。昨日、今日と「たそがれ」が続けられるとなると、継続の意欲も、めらめらと燃えてくる。「頼む、Ｎ兄！」と叫びたい。世界から戦火が、完全に消えるまで、世界平和を叫び続けたい。「しつこい馬鹿が！」と言われるまで、戦争好きに絡んでやりたい。「人を殺すより楽しい事は沢山あるだろうに！」戦争以外の憎しみもなくしたいものだ。人間の存在の尊さを、しっかりと地球上に定着させたいものだ。地上に生を得る数多くの生物たちとも仲良くやって行きたい。僕は地上の楽園を夢見ているのだろうか。少なくとも地上の地獄の存在より楽しいはずだ。

日差しは弱く、温度もあまり上がらない。依然メールは不調

　メールがうまく働かない。雑な要素が入りすぎる。でも執着している。トライするのみ。Ｎ兄に届いたら、送って貰える筈。懸命になるが、裏切られた結果のみ。書いても書いても、表示場面が、新しくならない。今日も無駄になるのだろうか。画面の全面転換は、費用が掛かりすぎる。古臭くて構わないから、書いた気持ちをそのまま残してくれれば良いのだが・・・。それも勝手なのか？ そうかも知れない。あまりにも長いことやって来過ぎたのかも知れない。誕生日までには決着をつけたいと思っている。
　未到着のメールが増えてきてしまった。３、４日分くらいになってしまったか。５月を調整期間として、お休みにするかもしれません。今の不調が、今後も続くようなら、「たそがれ」の寿命が来て居るのかも知れない。最後の粘りの期限は、今年の誕生日６月４日にしておきます。それまでにケリがつかなければ、「たそがれ」の終末として、扱ってください。

荒っぽい予報、外れる予報、もう少し当たってくれないか

　気圧の移動の予想と、雷雨など急激な変化の予想の時間的一致が難しいのかもしれないが、大局は、良い線を行っているのに、予想結果とは大きくズレて居る。方法論に問題はないか。外れた場合の原因を逐一追って、予想の根拠と現実の天気の変化のずれを追求しておくことが極めて重要。ご健闘を祈る。
　ハマスとイスラエルの観点の相違がどこにあるのか、将棋をやっている訳ではない、一国の市民の命をどう計算に繰り込むかがかかっている。自分の親や、子供らのことだったらどうするか、アメリカやロシアが判断するにも、人間性が重要だ。戦闘休止を決めるのに、「意地」だけで継続決定するのは無法だ。殺し合いを中止するのを決めることは、人間を守るのにも重要な行為になるのだ。

予報は雷雨だったが、まだ一滴の水滴も落ちて来ない

　明日にずれ込んだのか、雷様がさぼったのか、それとも明日に延期になったか。和子が予報を聞いて、外出を控えていたが、３時近くなって、出かけて行った。天邪鬼のお天気が、へそを曲げて降り出さなければ良いが。そんなことになれば、またこの健三様のお出まし要請となる。今日は何故か、僕の方が体がだるい。
　富山の和子の実家で、不幸があった。まだ70歳台という若さで、和子の甥っ子で長男の博文君病死の報を手にした。病気をしていたのも知らなかった。夏休み毎にお邪魔をして、散々お世話になり、富山を勉強させてもらった和子の実家の長男坊だ。夏休み毎にお世話いただいて、有難かったが、途中で、彼とは交わりが途絶し、縁が切れてしまった。和子の実家でもあり、後継ぎ婿さんの長男でもあった。内臓疾患のためと聞いている。心からご冥福を祈りたい。

曇り、時折日差し、風も強く、予報では、この近くの地域では強い雨も

　山田先生から、久しぶりにメールを戴く。葉書で転載したくなるような作品が少なくなって、寂しがっている。僕の病気や、パソコンのトラブルのせいか、パソコンでの便りもめっきり少なくなった。僕の方も、段々パソコンから離れそうで、寂しくなりそうだ。ただ、これだけはできる限り続けたいと思っている。
　今、外からかかってきた和子の電話も、聞き取りが困難で、話しているうちに段々涙が出てくる。内の電話が古くなってきたせいなのか、しっかりした器械に替えたい。お金ばかりかけても、一向に実用に役立ってこない。大げさでなく、今は泣きたくなった。

ほぼ曇りの状態　時々風が強まる　気温は低め

　風が強いせいか、洗濯物はよく乾いた。しかし、風で飛んだり、洗濯もの同士がからみあったりして位置修正に大童。女房の留守宅は、ベランダが、洗濯もので混乱している。僕のような留守番宅では、ちらりちらりと、下着姿のご亭主の姿も見え隠れ。僕のような高齢者且つ病人家庭では、暗く閉ざされがちだが、夏の強風は、開けっ広げにして、かえって健康的だ。家の和子は、今日もお歌の練習のようだ。なくして大騒ぎで見つけ出したステッキなど、邪魔になるのか、玄関に置き去りにして行ってしまった。体には気を付けてくれよと、僕の方が怪我を気にして、ヤキモキしている。
　僕の痛風の具合は、ほぼ良くなっているが、足の親指などに、いったん悪化するとたちまち歩けなくなるほどの恐ろしさを秘めているのが怖い。十分な警戒を忘れてはならない。

晴れ　天気は上々　しかし年中の夏の見通しが不安

　夏の気温や、雨の量は、コメの取れ高を中心に農業生産物に大きな影響がある。最高気温の低下、日照時間の極端な減少などは、日本の農業に大きく影響する。また漁業なども、魚種や取れ高に大きくかかわってくる。産業のアンバランスが気になってくる。対策が手遅れにならないように、研究と施策を進めてほしい。漁業では、海洋の地盤や気象の変化、生物の生態変化に伴う漁業の構造変化など、漁民の生活問題として、常に把握しておかなければならない。
　僕は、子供の頃から、端午の節句には、しょうぶ湯に入るのが好きだった。僕の母親も、かなり大きくなっても、しょうぶ湯を必ず沸かしてくれた。そして和子もまた、それを受け継ぎ、僕の子らにもしょうぶ湯を沸かし続けた。今日も、僕は赤色に染まった菖蒲の茎の根元を音を立てて擦っていた。

みどりの日　祭日に見合った天候になった　よく晴れている。

　気温も上がってきた。これで、「みどりの日」が一気に役割を果たす。「みどりの日」の名前の通り、新緑がその濃さを増し、鯉のぼりの勢いを支えて、季節感が充満し始める。この良き日に、和子はカラオケに行ってしまった。余り体調がすぐれず、イライラしている様子だった。昨日は、ステッキを忘れて来て、戻っては来たものの、他にも忘れ物をしてしまい、気分がすっきりしないまま、今日も出かけて行った。事故でも起こすと大変なので、迎えに行こうかと思っている。何かイライラしていて、危険な状態に見える。これから電話連絡で足止めさせてから、出かけてみることにする。

憲法記念日は、青空の回復で始まった。

　こんな日に、世界で、勝手に戦争を始められない監視委員会を設置することができないものか。個別国家が、実力行使に入る前に、この委員会に強い事実調査の権限を持たせ、やたらな殺し合いに入ることをチェックできれば、貴重な生命を守ることも可能になる。子供達や世界の治安を守る世界警察に権限を持たせることも考えられる。不幸な子供たちや病人や負傷者を救えるだろう。不幸な子供らを作ってしまう前に、その根源を断ち切ることが大切なのだ。３日は憲法を大事にする日。５日は、子供を大切にする日。祭日には、みんな重要な意味が込められている。最も重要な「平和と協力の日」を忘れてはいけない。毎日が、そうだから、忘れてしまうのだろうか。だとすれば、人間に、地球を預ける訳には行かなくなる。　

昼近くなって、やっと日差しが見えた。大きな雲と、間から差す日差しとの天候回復合戦になりそうだ

　５日の鯉のぼりが上がる頃までに、どちらに与する背景が広がるか。僕にとっては、断然「五月晴れ」を応援して、好天に転ずる方に賭ける。明日が「憲法記念日」、明後日が「みどりの日」、次の日曜日が「こどもの日」、翌６日が振替休日と４連休になる。これは時の政府の政策的配慮だろうが。
　それは考えないことにして、晴れにならない手はない。何をするにも雨になったのでは、出かけにくいし、どこにでも足を延ばしにくい。景色にしても、印象は弱まってしまう。ホテルで美味しいものを食べたところで知れている。人の旅行を見ていて、800を超える大小の鯉のぼりが、川面を泳ぎ渡るように川の上に仕掛けられた雄大な風景は一度は見てみたい。高齢でなければ、いつかは見られるだろうが、もう、そうそう機会にめぐまれることはなかろう。テレビでは何回か見たことがあるのだが。

朝から梅雨のような雨、しっとりと降り続く

　この天気が続けば、しっかりと梅雨のようになる。しかし、菖蒲湯に入る頃には、あの整然とたなびく鯉のぼりにふさわしい青空を取り戻すだろう。あの風景を見なければ、僕も年を取り切れない。どうせ人生を終わりにするなら、節目をつけたものにしたい。こんな記録をつけていると余計に「絶筆」の瞬間が気になってくる。第一の節目は、今年の６月４日だ。完璧な91歳になる。恒ちゃんや松ちゃんが、92歳に届いたのかどうか、正確には承知していない。二人ともにこにこしながら肩を組んで、僕の机上から笑いかけてくる。もちろん写真の話になる。たとえ写真でも僕には力強い応援になる。それから、突如飛び込んで来る「山田潔」同志の葉書だ。二村同志の声援は、この記録に関わる無口の声援が協力だ。皆、実に有難い声援になって僕を取り囲んでいる。僕も静かに粘り強く歩みを続けよう。